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2016年10月23日 (日)

70歳になりました。

 70歳になって、健康保険の自己負担が2割となった以外、特に何かが変わったわけではありません。ただ、節目の年齢のためか、あと何年生きるのだろうか、とふと考えました。日本人男子の平均寿命80.9歳並に生きるとすれば残り10年すこしだし、親父とお袋の平均死亡年齢88歳までだとあと18年となります。この10年あるいは18年が、短いのか長いのか、未来を想像すれば長い気がするし、過去10年から18年を回想すれば、あっという間の時間だった、という気がします。そして、10年より短ければ短命だったと諦め、18年を超えて生きつづければ、自らの長命をありがたいと世に感謝するだろう、と思います。

 年をとるにつれ気になることが、いくつかあります。そのひとつが、今後何冊ぐらい本を読むことが出来るのか。このことは、生来、趣味の少ない私にとって、読書は数少ない楽しみのひとつだからです。現行の月4,5冊ペースで読みつづけるとすれば、年間50冊ほど読むことができます。すると10年で500冊、18年で900冊。冊数ではかなり多い感じがしますが、長編小説だと複数冊で1作品となり、作品数で云えばこの冊数の何割か減少します。この1年間の実績では、長編小説を多く読んだこともあって、冊数合計65冊、作品数35作品となっており、作品数は冊数の半分程度まで減ります。10年から28年で250作品から450作品しか読めないという計算になり、意外と少ない。
 
 そこで次に問題となるのは、この限られた読書可能な冊数・作品数で、何を読むのか、ということです。数年前、今後何を読もうかと考えたとき、これまで馴染みのなかった作家については、新たに読み始めることを禁欲し、従来親しんできた作家たちの作品(すでに読んだものを含め)を読みなおすことにしょう、と方針をたてました。武田泰淳や堀田善衛を読み返し、井上ひさしや大江健三郎を読みました。しかし、新聞や雑誌の書評がどうしても気になる。書評を読みあさると、そのなかのいくつかは、是非読んでみたいと欲が出る。そして購入。禁欲的読書方針は、簡単に崩れ去りました。こうして、村上春樹と津島佑子の作品に、70歳近くにして初めて、出会ったのでした。自分にとっての新しい作家との邂逅は、確実に、新しい世界をもたらしてくれ、読書することの愉悦を再び思い起こさせてくれました。
 
 新しい作家を禁欲しょうとした背景には、これ以上の蔵書を増やさないでおこう、との意識がありました。本棚を増やすことは物理的に無理であるし、また、私が死んだあと、膨れ上がった蔵書をどうするかも気にかかる。そんなこと、後に残ったものが適当に始末するから気を揉むことはない、とわかっていても、やはり気にかかる。このことも、加齢にともない気懸かりとなっているもうひとつの問題です。本は、他の商品のように、使い終わったら廃棄する、というわけにはいかない。二度三度と読み返してみても、その使用価値は減少することはなく、いやむしろ、くり返し読むことによって、新しい発見と新鮮な感動を体験することができる。では今後、これ以上蔵書を増やさないで読書をつづける方法はないのか。ネットを使った電子書籍で読めば、場所としての蔵書問題は解決します。しかし、娘に進められて電子書籍を5,6冊読んでみましたが、ディスプレイを見ながらの読書は落ち着かず、馴染めません。紙で作った本を読むのが読書の王道である、という観念から解放されない。ではどうすればいいのか。そこでたどり着いたのが、図書館の利用ということでした。学生時代には図書館に入り浸っていたのですが、就職してからは、まったく利用したことがありません。ほぼ半世紀の間、図書館とは縁のない生活でした。

 高崎市立中央図書館へ行きました。自宅から車で15分ほど、新築の館内は広くて美しく、居心地のいい環境です。蔵書、新着情報、貸し出し状況については、自宅でネット検索でき、予約もできます。さっそく試しに、現在読みたい本を、検索しました。マルタン・デュ・ガール著『チボー家の人びと』、リービ英雄著『模範郷』、津島佑子著『ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語』、三浦英之著『五色の虹』。すべて揃っていました。『チボー家』以外は、すべてこの1年以内に刊行されたものです。新刊本はおそらく、新聞や雑誌の書評で取りあげられたものが選択されているのではないか、と想像します。私にとって、図書館の利用価値は、大変大きい、と確信しました。10冊まで2週間借りることができます。一回に2,3冊借りれば、隔週ごとに図書館へ通えば、月4,5冊の本を読むことができます。かくして、私の蔵書問題は、解決しました。

 このように70歳にして、私の新しいスタイルでの読書生活が、はじまりました。

 

 

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