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2016年12月 3日 (土)

朱色の世界に染まる―京都・紅葉狩りの初日―

 この週はじめ、姉夫婦の見舞いを兼ねて、京都で紅葉狩りを楽しみました。大学時代の友人との数年ぶりの、そして高校の生物部の後輩たちとの52年ぶりの再会を、美しく朱色や緋色に染まったモミジのもとで、果たすことができました。Img_2360    (今回の紅葉狩りで、もっとも朱色が際立っていた大覚寺・大澤の池の紅葉。)

 一日目の月曜日は、大学時代の友人ふたりと下鴨神社や相国寺を訪ね、夜、久々に懇親を深めました。
 下鴨神社の社叢である糺の森(ただすのもり)は、照葉樹林を主体とした植生からなり、それが巨木となって空を覆うため、モミジなど落葉樹の多くは日陰となって、紅葉も遅くなるようです。写真は、やっと紅葉しはじめた糺の森のモミジ。Img_1907 下鴨神社は、『方丈記』を書いた鴨長明ゆかりの地。長明が住んだという方丈(レプリカ)が境内に建っていた。移動ができる組立式の住居という。「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。・・・・・人と栖(すみか)と、またかくのごとし。」 無常なこの世の仮住まいの周りには、大勢の観光客が押し寄せ、ただただ、かまびすしい。あの3・11の直後、長明が大地震や大津波について触れた『方丈記』を読み直しました。その項は、「恐れの中に恐るべかりけるは、ただ地震なりけりとこそ覚え侍りしか」の記述につづき、ある武士の6,7歳の子が、地震で崩れ落ちた土塀の下敷きになって押しつぶされて亡くなったこと、そして、「子のかなしみには、たけきものも恥を忘れけりと覚えて、いとほしく、ことわりかなとぞ見侍りし」と記している。800年を隔てても、親が子の死を悲しむ心に、変わりはありません。鴨長明年譜には「1185年7月9日、京都に大地震あり」とあります。この年の3月、平家滅亡。Img_1911_4 昼、にしん蕎麦を食べたあと、同志社大学北側の相国寺を訪ねました。臨済宗相国寺派大本山の名にふさわしく境内は広大で、木々の陽当たりもよく、モミジの紅葉が美しい。モミジの向こうに鐘楼が見える。Img_1927_3 方丈庭園の紅葉。Img_1933_3 方丈北側の庭を「裏方丈庭園」と呼ぶ。モミジの紅葉と黄葉が重なり合っていた。Img_1940_2 方丈庭園の紅葉を堪能したあと、境内の美術館で開催中の『伊藤若冲展』を観る。若冲生誕300年を記念し、京都はいたるところで「若冲」があふれていました。ここ相国寺会場では、「釈迦三尊像」三幅は実物展示、そして鶏・魚・紫陽花などを描いた動・植物画三十幅はプリントによるレプリカ展示。若冲ファンが大勢来場していました。夕食前に寄った錦市場は、中国や欧米などからの観光客が押し寄せて賑わっており、その頭上には、「若冲生誕300年」の垂れ幕が掛かっていました。若冲は錦市場の八百屋の出身。Img_1970 散策の道中、河原町今出川交差点の北少しのところ、大福もちやおはぎを売る饅頭屋に長蛇の列ができていました。店の看板には、丹波黒豆大福とか粟餅などの名前が記されている。一方、同交差点にある老舗の和菓子店は、閑古鳥が鳴いていた。同じ現象を、漬物屋でも見かけました。錦市場の漬物屋はどこも客で込み合っていましたが、三条河原町にある、京都で最も有名な老舗の漬物屋はやはり、飛来するのは閑古鳥のみ。ネット時代の商い攻防の恐ろしさを感じます。
 3人がこの前顔を合わせたのは、3・11以前のこと。だいぶ月日が経ちました。鹿児島の焼酎を吞みながら、近況を報告し合いました。大学の教員を長く勤めたk君はこの夏、長春に赴き、中国人学生たちに日本語を教えた、と報告しました。中国各地から日本の大学への留学を目指して集まった学生たちは、極めて勤勉で礼儀正しいと、友人は日本の学生たちを頭の隅に置いて、感想を述べました。小学校の教員や校長を経験したF君は、ある私立大学の聴講生となって、文化人類学の勉強をしている、と語りました。すでに8年も在籍し、担当教員は彼の存在をあてにして講義を進め、若い学生たちを巧妙に学問世界に引き入れようとしているという。両君の大学を舞台にした社会参加に感心し、誇らしく感じました。私は、地区の高齢者を集めてのサロン活動やヤマザクラをまもるための里山での活動を話しました。焼酎が進むにつれ、過去のことがよみがえり、三者三様に子どもを失った経験をもつ私たちは、亡くした娘や息子の話に涙ぐみ、別れた娘への思いなどを吐露し合いました。旧友とのひさびさの宴は、あっというまに3時間を超え、そろそろ帰ろうか、と席を立ちました。 

















       
 

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