津波予見可能・原発事故は防げた! 群馬避難者・原発訴訟判決
一昨日、前橋地裁において、福島原発事故で群馬県に避難した住民による集団訴訟の判決があり、その報告集会に参加しました。会場となった教育会館大ホールには、立錐の余地なく大勢の人びとが詰めかけ、熱気がこもっていました。演壇の上には、「故郷を・普通の生活を返せ!こどもの未来を奪うな!」と大書したパネルが掲げられていました。
判決は、すでに新聞・テレビが大きく報じた通り、被告の国と東電が津波予見が可能であったにもかかわらず津波対策を怠った、と認定し国と東電に、62人への計3855万円の損害賠償を命じました。認定された請求は、次の通りでした。
原告137名の請求金額、1人当たり1100万円、総額15億7000万円
全部棄却72名、一部認容62名。
避難指示等区域内の原告数 72名、うち認容19名。
最高額 350万円、最低額 75万円。
自主的避難等区域内の原告数 58名、うち認容43名。
最高額 73万円、最低額 7万円。
報告集会では、全国各地からきた同様の集団訴訟の弁護団代表が、前橋地裁判決を「国の加害責任を認めた、大きな一歩だ」と高く評価し、今後つづく各地の裁判への好影響の期待感を率直に表しました。そして、連帯の挨拶の後に、群馬の原告団に対して、「おめでとうございます」と口を揃えました。
各地弁護団の連帯の挨拶のあと、原告の3人が感想を求められ、演壇に立ちました。
いわき市から前橋市に避難してきた丹治杉江さんは、国と東電の責任を問うた原告の勝利を「うれしい」と率直に評価しながらも、この6年間は苦しいことばかりで、「自主」避難者である自分に認められた18万円の賠償金が、こうした苦労に見合う金額なのがどうかに戸惑っている、と語りました。郡山市から高崎市に避難した松田健宏さんは、この判決は「全国へ避難した人びとの喜びだ」としながらも、3歳の子どもと夫婦の3人で避難し、6年間の毎日の苦しみを思うと、認定された賠償額は「不本意」だと述べました。そして、子どもの請求が棄却されたことに触れ、「子どもが一番の被害者なのに」と悔しさを隠しませんでした。3人目に立った中年の女性は、東電と国にあやまって欲しかった、弱い立場の声は聞いてもらえなかった、と声を落とし悲痛なまでに悔しさをにじませました。3人の原告の挨拶は、各地弁護団が「おめでとう」を連発しつつ明るく語ったのと対照的に、戸惑いと悔しさの混じった暗さのなかに言葉が沈澱してしまったようでした。他所弁護団の明るさと原告の暗さの落差の大きさに、戸惑いと悲しみを覚えました。裁判闘争の困難と苦渋をはじめて、実感しました。今回の前橋地裁判決が、➀国と東電の責任を明確に認めたこと、②「自主」避難者に対して、救済の道を開いたこと、➂全国各地の裁判闘争に希望を与えたこと、等の評価には同意しますが、しかし、群馬原告団が目指した「被害者が将来に希望を持てる」判決であったかどうかについては、判断を保留せざるを得ません。今後も、原告の気持と生活実態に寄り添った裁判闘争が、原告と弁護団の強い絆のもとに継続されることを、心から願うものです。
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