次男の住むマレーシアのペナン島を訪ねました。初めての東南アジア旅行に、五感はエキサイトし、疲れ知らずの10日間でした。旅の途中に撮った写真に説明を加え、今回のペナン旅行を記録しておきたい。 ペナンの街角はどこも、現代と伝統が共存している。
まずは、2008年にユネスコ世界遺産に指定されたジョージタウンで、目を楽しませてくれたストリートアートのうち、最も惹きつけられたロシア人画家の作品を紹介します。
画家のジュリア・ヴォルチコヴァ(Julia Volchkova)は、1987年、ロシアのシベリア西部で生まれました。若い頃ころから絵画を学び、23歳でペテルブルグへ行き、ストリートアートを描きはじめました。そして2014年、マレーシアに渡航、ペナンで朽ちた住宅の壁に、人びとの肖像画を描きました。
その最初の作品〝The Child″。Tシャツの襟を噛んでいるインドネシアの少年。バリ島を訪ねたときに出会ったのでしょう。 ジョージタウンを自転車で徘徊していて、ふと出会った作品です。ここは、ジョージタウンの街はずれにあり、観光客もいない閑散の場所でした。 第2の作品〝The Indian Boatman"。舟を漕いでいる年老いたインド人。ジュリアは、ペナンの文化的多様性に魅了され、とりわけインド系コミュニティーに関心をむけました。私が見た最初のジュリア作品です。他の作家たちの作品が、子どもたちの何気ない日常を、ややコミカルに描いているのに対し、ジュリアの作品は、伝統的な農漁村で寡黙に働く庶民の姿を捉えています。 3番目の作品 "The Old Indian
Woman"。ジュリアがリトルインディアで出会ったインド人占い師。老婦の髪の毛が、樹木の気根と絡み合っている。次男は、この作品の前で、TV番組スタッフのインタビューをうけるジュリアと出会ったという。ちょっと凄みのある作品です。以上の3作品は、いずれもジョージ・タウンで観ました。
以下の4作品は、ペナン島西部の小さな町バリク・プーラウの古い商店街で観たものです。建物の側壁いっぱいに、大きく描かれている。
まず、"Rubber Tapping"。ゴムの木の樹液を採る女。モデルがマレー系なのか中国系なのか、わからない。制作後数年しか経たないのに既に、壁画の一部は剥げ落ちている。 "The Fisherman"。漁船の繋がれた浜で、年老いた漁師が、なにか漁具の手入れをしている。ゴム園で働く女性とともに、静かで穏やかな表情が、印象的です。急速な近代化で、やがて失われていこうとしている漁村の姿が、残されている。観光客は壁画に目もくれず、歩き去りました。 "Silat"。シラットは、東南アジアで行われている伝統的な武術。マレーシア、インドネシア両国で盛んだ。マレー系の人びとによって、伝統は引き継がれているのだろうか。 “The Dancing Hakka
Girl"。中国からの移住民である客家(ハッカ)の娘の舞い姿。客家は、漢民族の一部とされる集団で、在外中国人である華僑の三分の一が客家だという。 ジュリアの故郷、西シベリアのニジネヴァルトフスク市は、住民の民族構成が、ロシア人66%、タタール人10%、ウクライナ人8%、その他の少数民族数%という、多民族社会から成り立っています。このことからジュリアが、ペナンの民族や文化の多様性に共感を示すのは、ごく自然な事なのでしょう。彼女にとっては、マレー系、中国系(華系)、インド系といった民族の違いよりも、ペナンの地べたで働き遊ぶ庶民の姿こそが関心の的だった、といえるのではないでしょうか。
参考資料:ジュリア・ヴォルチコヴァ(Julia Volchkova)
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