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2021年12月16日 (木)

冨岡『世界』を読む会・12月例会より

 富岡『世界』を読む会の12月例会は、12月15日の午前、4人の参加で開催されました。本人の怪我やパートナーの病院付き添いなどによる常連会員の欠席で、少数での読書会となりました。
 今回のテーマは『世界』12月号から、「特集1.学知と政治」の 岡田正則・加藤陽子お二人の論考と辛淑玉さんの報告でした。

1.特集1.「学知と政治」は、昨年9月、菅前首相によって学術会議会員任命を拒否された6人の学者の貴重な証言から構成されている。この問題は、昨年の『世界』12月号でも特集が組まれ、今回が2回目の特集。 
(1)まず、「学術会議とは何か」について、各論考から次の通り整理した。①政府から独立した科学者を代表する国家機関、②目的は、科学の向上・発達、行政・産業・国民生活への反映・浸透、政府への勧告・提言、③特性は、独立性と学問の自由の尊重、③思想的存立基盤は軍事研究反対。
(2)では、菅前首相による6人の科学者の学術会議会員任命拒否の動機や背景は何か? ①政府は人文・社会科学の知を、科学技術・イノベーション振興という国家戦略に組み込みたい、②政府による軍事研究推進を妨害している、③核のゴミ問題に関する提言は、政府のエネルギー政策に不都合、④政府の、独立機関に対する人事支配拡大による権力抑制機能の破壊、等を確認した。
(3)任命拒否の理由と根拠を問う質問に対する菅前首相の非論理的、反知性的、意味不明な答弁に対し、理屈(論理と知性)で詰めても聞く耳を持たない政治の横行に恐怖を感じる、という感想が出された。
(4)衆院選挙後、「批判ばかり」と批判そのものが非難される倒錯した状況が生まれていることに対し、学術会議批判と同質の問題だとの指摘があった。
(5)学術会議の内部、主に理工系会員の中に、軍事研究容認論が存在することを初めて知り、今後が心配だ、と述べられた。
(6)軍事研究検討委員会での容認派と否定派の論争をみると、容認派の「自衛隊肯定者が9割となった社会で、安全保障が必要ならばそのための研究も必要」という論理に対し、否定派は「学問の自由、過去2回の軍事の研究否定声明の踏襲」で反論している。加藤論文を読む限り、容認派主張のわかりやすさに対し、否定派の主張が難しく大衆性を持ちえないのではないか、との懸念が出された。
(7)軍事研究反対を学術会議のみに期待するのではなく、私たちは、非核三原則、武器輸出三原則(現在は大幅緩和)などのように、「軍事研究・武器製造禁止原則」を政策とする政府を作っていくべきだ、主張された。

2.報告 辛淑玉『「ニュース女子」事件とは何だったのか』
(1)レイシズムを煽った「ニュース女子」が地上波TV局の番組であり、判決後TV報道がなかったことなどから、辛さんは「ジャーナリズムの倫理の危機」だと断じます。
(2)裁判で敗訴したあともなお、問題の番組がNETで垂れ流されていることに、NETの抱える深刻な問題だ、と指摘された。
(3)「日本には人種差別はない」という意識は、日本社会にはびこる「単一民族神話」に由来し、在日韓国・朝鮮人差別は、明治以来の「脱亜入欧」、白人コンプレックスとアジア人蔑視の伝統にもとずく、との発言があった。
(4)辛さんは日本のレイシズムの背景として、「日本が東アジアで存在感を弱めている」ことやレイシストたちが「妄想による被害者意識」に駆られていることを指摘しているが、それよりもそもそも日本社会には、アジア人蔑視と差別意識が根底にある、と意見が述べられた。
(5)辛さんは、心身ともに疲弊して、2年間ドイツに避難したが、ネットでの攻撃がつづき、さらに追い詰められたと証言している。なんとも恐ろしい事態だとの感想がだされた。
(6)ジャーナリズムの名誉回復と人権尊重の意思表示として、この問題についてのテレビでのドキュメンタリー番組の制作があって欲しい、と希望が述べられた。
(7)木下順二の戯曲『巨匠』と関連して、この脚本の掲載された単行本『巨匠』から、劇評対談からの言葉の引用・紹介があった。思想家・林達夫の語ったという「時代の行列に参加するな」という言葉。「時代の行列というのは、ナチの行列や日本の軍国主義の行列だけではない。今も行列がある」と対談者は語った。全閣僚がブルーリボンバッジを胸につけ、ほとんどの与党議員と少なからずの野党議員までもが、ブルーリボンバッジの行列に参加している。この行列の参加者の多くが、敵基地攻撃能力の獲得を声高に主張している。

3.富岡『世界』を読む会・新年1月例会の予定
(1)1月19日(水)9.30-12.30時、西部コミュニティ・センターにて
  (2)『世界』2022/1月号
   ①特集1.ケア 岡野千代『ケア/ジェンダー/民主主義』および村上靖彦『ケアから社会を組み立てる』
   ②特集2.気候危機と民主主義 飯田哲也『複合危機とエネルギーの未来』および小西雅子『COP26はどこまで到達したか?』

冨岡『世界』を読む会のご案内
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