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2022年4月23日 (土)

富岡『世界』を読む会・4月例会の報告

 富岡『世界」を読む会・4月例会は、20日(水)午前、5人の参加で開催された。
 今回のテーマは、『世界』4月号の特集「中国とどう向き合うか」の中から、高原明生『日中関係の現在地と方向性』、丸川哲史『米中対立と東アジア冷戦』の2論文と、河野洋平『外交の知恵を尽くせ』のインタビュー記事の計3本だった。

1.高原明生・丸川哲史の2論文について
 まず高原論文で、過去30年間の中国の外交方針の変遷を、スローガンを通して確認した。
 1990代 「
韜光養晦」(鋭気や才能を隠して時を待つ)「有所作為」(為すべきを為して業績を上げる)
 2000代 「和諧世界」(調和のとれた世界)「堅持韜光養晦、積極有所作為」(能力を隠して力を蓄えることを堅持するが、より積極的に少しばかりのことをする)
 2010代 「積極有所作為」から「奮発有為」(奮発してことを為す)へ
 そして、2016年の習近平発言は、現在の中国の外交姿勢を端的に表わしている。「中国民族のエネルギーは余りに長く抑圧されてきた。ここらで爆発させて偉大な中国の夢を実現せねばならない」。このように、中国の外交方針の変遷は、国力(経済・科学・軍事)の拡大とともに、穏健・宥和政策から挑戦的な強硬政策へと変化してきたことが理解できる。そうした中国とどう向き合うか。 
 著者は、日中関係の「脆弱性を抑制し強靭性を強化すべし」と提言するが、それは曖昧で不明確だとの指摘があった。また、「中国には・・・慎んでもらいたい」との要望があるが、それは無意味だと批判があった。
 向き合い方を理解できなかったというAさんは、中国の外交の変化の根っこには「力とカネの信奉」があるとの端的な指摘に、納得していた。
 Bさんは、隣国であるにかかわらず、中国を知らなさすぎると反省したうえで、今回の論文でおおくのことを学んだ、と感想を述べた。米中関係と日中関係は、あらためて相互尊重・平和共存・協力共栄を図ってくべきだと語った。
 Cさんは学生時代、文革や「造反有理」のスローガンなどに共鳴していた、と振り返り、中国の近代化の道は苦難に満ち、強い力に屈してきた屈辱的な歴史だった、と指摘した。また、中国の強硬路線を変えるのは難しいが、国連と国際世論、メディアを通して、穏健な路線に変えていくべきだ、と主張した。
 戦狼外交について話題に上ったとき、近年の外交には、冷静さや謙譲さ、品位や風格などが失われ、過激であること強硬であること、罵詈雑言が日常化し、つまりトランプ化し、それは極めて危険な兆候だとの指摘があった。外交が外交力を取り戻さなければならない、と確認しあった。
 最後に、日本の「対中貿易38兆円、対米貿易24兆円」という数字を踏まえた議論が欠かせない、との指摘があった。
 丸川論文についてはあまり触れられなかったが、中国の「一帯一路」政策は帝国主義政策であるかを問い、中国は対象国に対して体制転換という介入はしていない、との指摘は重要だと思った。

2.河野洋平インタビューにいて
 なによりも、『世界』には難解な論文や横文字が多い中で、このインタビューは大変分かりやすく、今日の日中関係の原点ともいうべき日中国交正常化の歴史が、ストンと胸に落ちた。これは参加者全員の感想。
 河野洋平氏のアドバイスを参加者で確認しあった。2点のみ書いておく。
 ①中国に関し発言する人は、「日中共同声明」と「日中平和友好条約」の2文書が必読。安倍晋三の「台湾有事は日本有事」の妄言は、この2文書からは出てこない。
 ②日本から積極的に、南西諸島の非武装化を提案すべき。

3.冨岡『世界』を読む会・5月例会の予定
(1)開催日・場所:5月25日(水)9.30-12.30  吉井町西部コミュニティ・センター
(2)テーマ
    ①緊急特集 ウクライナ 塩川伸明『ウクライナ侵攻の歴史文脈と政治論理』
              西谷修『新たな「正義の戦争」のリアリティ―ショー』
  ②特集2 憲法の現在地 大門正克『生きる現場からの憲法 第1回 夜間中学の学びと東アジアの歴史』
 

 

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