富岡『世界』を読む会・10月例会の報告
富岡『世界』を読む会・10月例会が、10月19日(水)午前、吉井町西部コミュニティセンターで開催されたので、報告します。
今回のテーマは、『世界』10月号から、①岸本聡子✕内田聖子・対談『民主主義と自治の再生―フィアレス・シティへの条件とは何か』と②谷口将紀・淺野良成・大森翔子『2022年参院選―データが示す有権者の右傾化』の二つの記事でした。①が地域からの民主主義の再生を熱く語り合った、未来への希望を予感させる対談であったのに対し、②の参院選投票行動分析は、日本社会の右傾化を指摘し、暗然とした気分にさせるものでした。
1.対談『民主主義と自治の再生へ』
杉並区長選を僅差で勝利した岸本聡子さんと『世界』に掲載された「水道の再民営化」記事の筆者・岸本聡子さんが同一人物であることを、この対談ではじめて知った。アムステルダムのNGOで活躍していた女性が、杉並区長選に立候補したことも驚きだが、選挙に勝利したことは、さらなる驚きだった。「女性」「国際人」「市民活動家」という今までになかった首長候補の登場と新区長の誕生に、60,70年代の革新自治体の全国席捲を思い出し、希望の灯がともったとの感想を、参加者全体で共有し合った。
地元で「町づくり」討論会に参加していても、何のためにしているのかわからないことが多く、対談で語られている「アジェンダ設定」が的確でないのだと思う、と体験が語られた。また、「気候市民会議」のような直接民主主義的な手法は、住民の参加意識の欠如と政治家の劣化という二重の不幸に対し、住民の覚醒を促し政治家を刺激するのに有効だ、との意見が出された。自ら自転車通勤をする岸本区長の提起する「自転車が乗りやすいまちづくり」も、わかりやすく身近で、魅力的なアジェンダだ。かつて荻窪に勤めていた参加者からは、当地では自転車が歩行者からも自動車からも嫌われ排斥されていた、との感想が述べられた。杉並区民と岸本区長の立案と実践に注目したい。
新自由主義による民営化、外部委託、公務労働の非正規化は、公務員の持つ専門性の蓄積と継続にマイナスだ、と指摘された。長年地域のスポーツ団体に関わってきた参加者は、スポーツ大会や交流会などの経験知が団体メンバーに共有され蓄積されてきたことから、運営を外部委託しておれば、この経験の蓄積と継続は失われただろうと、指摘した。
「民主主義と自治の再生」という観点から地元群馬の自治体を見ると、玉村町の実践をあげることができる。2020年の町長選で自公支援の現職に小差で勝った石川眞男町長の福祉政策が注目される、と紹介された。たとえば、生活保護受給について、町役場職員が町内巡回をするなかで、住民相談を積極的に行っている。町役場のサイトを見ると、生活保護受給の手続について、丁寧でわかりやすい説明がされていて、好印象を受ける。まだまだ地方自治の再生による民主主義の強化と復活に、希望が持てると、出席者間で確信し合った。
2.谷口将紀・淺野良成・大森翔子『2022年参院選―データが示す有権者の右傾化』
この参院選分析結果に対して、「大変暗い気持ちで読んだ」「ロシアのウクライナ侵攻の影響の大きさを痛感した」「全般的右傾化の先に何があるのか、恐ろしい」「維新の躍進、参政党・N党の議席確保、立憲・共産の不振、これらの原因分析を期待したが、不発だった」「有権者調査・候補者調査の信頼度に疑問」等々の感想が出された。前の対談が明るい話し合いになったのに対し、参院選分析はイヤーな感じの議論に終始した。しかし、調査結果を踏まえた分析を素直に読めば、このイヤーな感じを抱えながらも、「右傾化からの反転攻勢」の道を探らなければならないと思った。
3.富岡『世界』を読む会・11月例会の案内
(1)開催日・場所:11月16日(水)午後2.00~5.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターにて
(2)テーマ:『世界』11月号から ①高橋哲哉『終わりなき歴史責任―欧州の現在と日本(下)』(9月号の『上』も同時に読む)
②辛淑玉『千三つのギャンブル—民主主義を獲得するために』
*時間帯が午前から午後に変更になっています。
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