富岡『世界』を読む会・12月例会の報告
富岡『世界』を読む会・12月例会が、12月21日の午後、高崎市吉井西部コミュニティ・センターで開催されたので報告します。今月のテーマは、①斉藤正美稿『自民党と宗教右派の結託が阻んできたもの』と、②藤原帰一稿『壊れる世界 第4回 自由世界と国民国家』の二つの論文でした。今回は、練馬『世界』を読む会に見習って、コーヒー&クッキーを楽しみながらの例会でした。
Ⅰ.斉藤正美稿『自民党と宗教右派の結託が阻んできたもの』
7月8日の安倍晋三銃殺事件は、自民党と統一協会との長年にわたるズブズブの密接な関係を、明らかにした。例会ではまず、この自民党と統一協会との関係について、参加者から思い思いの感想が述べられた。
カルト団体である統一協会と強く結びついた政治家が、政権中枢にいたことに、身体が震えゾッとするほどに驚愕した。2000年代の性教育や男女共同参画への激して攻撃、バックラッシュの背景に、統一協会や日本会議などの右派団体があり、それらに支援された自民党右派の議員たちがいたことを再確認し、怒りを覚えた。日本国憲法の核心は、個人を尊重することにあると思うが、自民党と宗教右派の攻撃対象はまさに、この「個人の尊重」条項であり、統一協会と自民党の改憲案はともに、憲法第13条「個人の尊重・幸福追求権」の改ざんを求めている。学生時代、知人の女性が原理研究会に入ったことを思い出した、等々。
統一協会についての感想を述べ合う中で、何故、宗教右派や自民党保守派等の右翼勢力が「家族」を重視するのかと、提起された。斎藤論文に沿いながら、右派陣営の「家族」重視の考え方を整理した。
①「家が整わなければ国が乱れる」、②人権擁護法案、夫婦別姓、ジェンダーフリーは、「個人至上主義」で、家族を否定して人をバラバラにするものだ、➂民の自助を求める小さな政府がよりどころとするのは、社会の基礎となる家族である、④日本国は、皇室を頂きながら大きな家族のように生きてきた家族国家である、⑤若いうちに結婚し、子供をたくさん産むという「モデル家庭像」を提示し、それから外れる多様な家族と個人の在り方が、否定される。
では、右派のいう家族主義で、少子高齢化と低出生率による日本社会のシュリンクは、防止できるのだろうか。低出生率が問題となっている日本、韓国、イタリア、スペインなどは、いずれも「家族主義」への依存の強い国々であり、育児を家族に押し付けている。つまり、家族主義が低出生率の原因の一つなのだ。自民党と宗教右派の「家族主義」の限界は、この辺りにも現れている、と指摘された。
Ⅱ.藤原帰一稿『壊れる世界 第4回 自由世界と国民国家』
第一テーマの「統一協会」関連の議論が長引き、また藤原論文が難解なこともあって、十分な議論はできなかった。ただ 「日本から見た中国」「中国から見た世界」については納得感があり、視点を変えることの重要さを知った。
日本政府の言う「自由と繁栄の弧」「自由で開かれたインド太平洋」などの構想は、「自由世界の「われわれ」が自由世界とは異なる政治体制をとる他者としての中国に立ち向かうという、地政学的対立の意味づけであった」。一方、中国からすれば、中国の「軍事的・経済的台頭にもかかわらず、・・・・・先進工業国のネットワークを前にした中国は、ルールを作る主体ではなくルールを適用される客体に過ぎなかった」。そして西側同盟の軍事的脅威に直面してきた中国にとって、「外から脅威として映る中国ではあるが、中から見れば脅威にさらされていることになる」。だからこそ、平和の構想力を堅持した外交努力が、双方に求められるのだと思う。
Ⅲ.2023年1月例会について
1.開催日・場所:新年1月18日(水) 14.00~16.00時 吉井町西部コミュニティ・センターにて
2.テーマ:①兼子歩稿『中絶論争が見えなくしたもの—アメリカ合衆国の生殖の政治』
②韓国・北朝鮮関連論文
a.蓮池薫稿『「拉致問題」風化に抗して」』
b.田中均・青木理『日朝首脳会談20年 失われつつある東アジアの展望』
c.権容奭(クォン ヨンソク)稿『ルックバック2002』
3.その他:会場は暖房不足により寒いです。各自、防寒対策をして参加してください。
以上
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