富岡『世界』を読む会・9月例会の報告
富岡『世界』を読む会・9月例会が、9月20日(水)14.00-16.00、吉井町西部コミュニティ・センターにて、5人の参加を得て開催された。テーマは、①「特集1 私たちの日韓関係」から文在寅インタビュー『前大統領、書店をひらく―本の力を信じて』、②「特集2 専門職の危機」から元村有希子稿『研究者を使い捨てる国』の2本だった。
Ⅰ.文在寅インタビュー『前大統領、書店をひらく』
隣国の前大統領が、退任後故郷へ帰って小さな本屋を開くという。多かれ少なかれ読書家を認ずる参加者は、このことだけでもう、強烈な印象を受け共感の声をあげた。そして、全国に広がる本屋運動の背景に、7,80年代の「新しい出版運動・読書運動」が韓国の民主化運動に繋がっていたことを知り、隣国への羨望と尊敬の気持ちを強めた。
インタビュアーが、文氏の書斎を閲覧する場面があるが、韓国内外、古今東西にわたる蔵書群は、文氏が抜きんでた読書家であることを彷彿とさせるものだ。日本の宰相が旅の友として選んだ『アマテラスの暗号』(伊勢神宮の神はアマテラスでありキリストである、古代日本を築いたのは渡来したユダヤ人だ、と歴史として語る。天声人語8/18より)との落差の大きさに、愕然とした。「本を読む政治勢力と本を読まない政治勢力、その政治は違う」というインタビュアーの指摘が、重くのしかかるようだ。
文在寅前大統領の次の言葉は、しっかりと頭に仕舞っておきたいと思う。
「私は本の力を信じています。本が世界を美しくすることができると思っています。若い人たちがスマートフォンに集中して本から遠ざかっていますが、それでも本の価値、本の力は永遠に続くでしょう。スマートフォンが代用できない紙の本のユニークな機能を信じています。」
Ⅱ.元村有希子稿『研究者を使い捨てる国―雇い止め問題の深層』
「失われた30年」の内実を語る一章だ。「雇い止め」と「ポスドク」。若い研究者にとって「希望のない国」になってしまい、それより何よりも、「食べていけない国」になってしまった。筆者は嘆息する。「この国は科学技術立国とは名ばかりの「知の砂漠」になり果てるだろう」。
Ⅲ.富岡『世界』を読む会・10月例会の予定
1.日程・場所 10月18日(水)14.00-16.00時、吉井町西部コミュニティセンターにて
2.テーマ (1)特集1.瀕死の1.5℃目標 ①ジークハルト・ネッケル稿『環境破壊をもたらす富豪層』、②箱田徹『非暴力、サボタージュ、オルタナティブな未来』 (2)小泉悠稿『ウクライナ戦争をめぐる「が」について』
以上
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