富岡『世界』を読む会・11月例会の報告
富岡『世界」を読む会の11月例会は、11月15日(水)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターにて6人が参加して開催された。今回のテーマは、『世界』11月号から①丸山真央『維新の会の「中抜き」政治はどこに向かうのか」と②水島治郎『「自由と寛容」をめぐるせめぎあい』および➂田中伸尚『橘宗一少年虐殺をめぐる記憶の再生』の三つの論考だった。
Ⅰ.丸山真央『維新の会の「中抜き」政治はどこに向かうのか』
伝統的な中間集団を媒介することなく、政治家が有権者と直接つながる「脱媒介」型コミュニケーションの政治を「中抜き」政治と定義し、維新の会の躍進を説明している。「中抜き」が社会構造の変化に伴うものであることから、問題が維新にとどまらないとの指摘は重要だ。難しい政治論をわかり易く解説していると参加者一同納得した。
論議の中心は参加者各人の「維新の会」論。万博問題で維新の底が割れた。大阪以外への拡大は「中抜き=根無し草」故に無理。「公より私」重視では格差社会に適合しない。維新のスピード感や公務員攻撃が若者人気につながっているのでは。
Ⅱ.水島治郎『「自由と寛容」をめぐるせめぎあい—オランダから考える』
オランダの国王と首相が、奴隷制と奴隷貿易が人道に対する罪であること、その痛みはいまもなお子孫の人びとに残されていることを認め、そのことに対して謝罪をした。松野官房長官は、関東大震災直後に起こった朝鮮人虐殺に関する記録が政府内に見当たらない、と語った。謝罪どころか史実の認定すら語らない。この彼我の違いはどこから来るのか。論議では、絶望することなく執拗に、自公政権の歴史認識を批判し続けなければならないことを、共有し合った。
植民地支配については「ヨーロッパ各国も反省していない」という右翼・保守の言説に対する痛烈な反論だ、との意見が出された。また、論考後半の、現在の難民問題の取り扱いが奴隷制に対する自己批判と矛盾している、との指摘に対しては、必ずしもリンクさせるべきではない、との意見が出された。
Ⅲ.田中伸尚『橘宗一少年虐殺をめぐる記憶の再生―「甘粕事件」100年』
衝撃的な報告だ。関東大震災直後、大杉栄と伊藤野枝は甘粕らの軍人によって虐殺された。その時、栄の甥の宗一少年が、犯行の発覚を恐れた甘粕らによって絞殺された。宗一の父橘惣三郎は、治安維持法のもと、勇断と覚悟をもって、宗一の墓碑を建てた。碑には次のように刻まれていた。
「宗一(八才)ハ再渡日中東京大震災ノサイ大正十二年(一九二三)九月十六日ノ夜大杉栄 野枝ト共ニ犬共ニ虐殺サル」。
論考では、感動的な墓碑発見の経緯が報告され、「忘却から記憶の再生へと舞台は回った」と記される。市井の私人たちの墓碑発掘の情熱に、ただただ頭がさがるばかりだ。「犬共ニ虐殺去ルが二度と刻まれない時代にしなければ」という関係者の発言に強く共感した。『世界』11月号の最良の収穫だ、との評価だった。
Ⅳ.富岡『世界」を読む会・12月例会の案内
1.日程・場所:12月20日(水)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティーセンターにて
2.テーマ:①筒井淳也『家族のアップデートはいかにして可能か』②小島美里『訪問ヘルパーがいなくなる』➂枝廣淳子『グリーン成長・脱成長・ポスト成長』 以上
« 富岡『世界』を読む会・10月例会 | トップページ | 富岡『世界』を読む会・12月例会の報告 »
コメント