富岡『世界』を読む会・7月例会の報告
富岡『世界』を読む会・7月例会は、7月18日(木)14.00-16.00時、吉井町西部コミュニティセンターにて、4人が参加して開かれた。テーマは、Ⅰ.「特集1 スポーツと権力」から①有賀ゆうアニース『スポーツとレイシズム』と②鈴木忠平『オリンピアンの涙』の2稿と、Ⅱ.「特集2 日本の中の外国人」から、➂安田浩一『ルポ 埼玉クルド人コミュニティ』、④林晟一『マルチエスニック・ジャパンの特別永住者』、⑤熊﨑敬『原っぱのサッカー大会に吹く風』、そして特集に関連して⑥國崎万智『レイシャル・プロファイリングはなぜ繰り返されるのか?』の4稿だった。
Ⅰ.特集1 スポーツと権力
1.有賀ゆうアニース『スポーツとレイシズム』では、欧米でのBLM運動とともに、日本のアスリートによるレイシズムへの抗議の事例が紹介されている。大坂なおみ、八村塁、オコエ瑠偉、オコエ桃仁花、八村蓮、鈴木彩艶。「同じマイノリティ当事者へのエンパワメントが発信の動機」と指摘される。しかし、彼らの反レイシズムの行動はバックラッシュを招き、「繊細な語りの技法」で身を守ることが強いられている、という。こうした日本人アスリートの出現に、勇気づけられたとの発言があった。他稿で論ぜられる「マルチエスニック・ジャパン(多彩なルーツを背景に持つ日本人が織りなすニッポン)」の力強い事例だ。
2.鈴木忠平『オリンピアンの涙』:オリンピックは本来、国家の代表ではなく、アスリート個人が世界から集い、最高の技を競い合う大会なのではないか。国家主導の現在のオリンピックのあり様に、批判が出された。しかし最早、国家や企業のサポートなしでは、オリンピアンとしての選手生命を維持できないのが実態だ、と指摘された。21東京オリンピックでの、スポンサー企業以外のペットボトルのラベルを外させたというエピソードには、皆あきれた。
Ⅱ.特集2 日本の中の外国人
埼玉にコミュニティを形成するクルド人、特別永住者としての在日コリアン、そして南米移民の子孫たち。在日外国人の諸相が、各筆者によって見事に描かれる。懸命に日本の地域社会に溶け込もうと努力するクルド人と、入管法改正を背景にクルド人を排斥しょうとするヘイト団体。反原発デモの際に攻撃してきた極右団体への恐怖体験の何十倍もの恐怖を、クルド人たちが味わっている。これは、在日コリアンの経験してきた道だ。しかし林晟一「マルチエスニック・ジャパン」は、多様なルーツをもつ人々が共生する社会を展望する。原っぱサッカーに興じる南米移民たちの子孫も、その仲間だ。ブラジル人とトルコ人の両親を持つ若者や日本人とイタリア人から生まれた青年が混じる。そして、県庁所在地からも離れた小都市・富岡の地でも、ベトナム人やアフリカからの労働者たちが、スーパーやコンビニで買い物をしている。参加者の一人は、彼ら・彼女らに声をかけた体験を語った。そして、こうした在日外国人たちに覆いかぶさるように繰り返されているのが、警察官による「レイシャル・プロファイリング(外見的特徴のみで対象を選ぶ職務質問や、国籍や宗教を理由にした個人情報の収集)」だ。警察官と警察組織の人権意識の決定的不足に、ただ嘆息するばかり。
Ⅲ.8月例会の予定
1.日程・場所:8月22日(木)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンター学習室(2F)
2.テーマ:1.特集1 戦争をとめる ①下谷内奈緒『なぜ国際刑事裁判所は、ネタニヤフ首相の逮捕状を請求したか』、②カリム・カーン『法を平等に適用しなければ、種としての人類が崩壊する』、➂浜中新吾『ネタニエフの背後にあるもの』
2.青木理『警察腐敗 内部告発者はなぜ逮捕されたのか』
3.その他:8月は、「第4木曜日」です。 以上
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