富岡『世界』を読む会・10月例会の報告
富岡『世界』を読む会・10月例会は、10月17日(木)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターにて、4人の参加で開催された。テーマは『世界』10月号から、次の通り。1.「特集2 核危機の人新世」①石山徳子『沈黙の廃墟-人新世に宿る植民地主義』、➁竹峰誠一郎『放射能とともに歩むーマーシャル諸島 折り重なる気候危機』、➂鴫原敦子『核の平和利用-福島原発事故と開発をめぐって』、および 2.ドイツ・イスラエル関係について、①駒林歩美『ドイツ「罪の克服」とは何だったのか-イスラエルへの「偏愛」が生むレイシズム』、➁橋本伸也『「歴史家論争2.0」とドイツの転落』(この論考は6月号)。
Ⅰ.特集2 核危機の人新世
「核」をめぐっては、一方で被団協のノーベル平和賞受賞のニュースが世界を駆け巡り、他方でウクライナ戦争を契機とするエネルギー危機と地球温暖化対策(CO2排出量削減策)としての原発回帰政策が、世界的な潮流となっている。今回の特集は、時宜を得たものだ、と感想が述べられた。特集は、「人類は核によって地球に不可逆の影響を与えた、核の時代は「人新世」の幕開けだ」と断じて、3点の論考を掲げている。
石山は、人新世の根元には先住人口の抹消前提の入植者植民地主義と人種資本主義の差別構造があるとし、その実例としてマンハッタン計画の拠点ハンフォード・サイトを挙げる。当地はコロラド川流域にあり、核開発と合成化学工業によってプルトニューム、ダイオキシン、水銀に汚染され、先住民族の抹消・ジェノサイドに連なっている、との指摘は重い。
竹峰は、戦後核実験が繰り返されたマーシャル諸島の住民が、深刻な被ばくを受けるとともに、離島・離散を余儀なくされた状況を報告している。米原子力委員会が被ばくした住民を「文明人ではないが、ネズミよりわれわれに近い」と揶揄したり、島嶼部をネバダの核実験場から出た大量の核廃棄物の捨て場としていたことなど、衝撃的な事実が記されている。またマーシャル諸島は、高潮や大潮に襲われることが多発し、気候変動の深刻な影響を受けている。筆者は、「核問題と気候危機問題が交差している」と指摘する。
「読む会」参加者は、両論文で明らかにされたハンフォード・サイトとマーシャル諸島の、現在から未来へも続くであろう深刻で衝撃的な歴史的事実を、深く重く受け止め合った。ただ、核の時代を「人新世」として括ることの意味や有効性について、疑問が出された。また、「人」を「ひと」と読まず「じん」と読ませていることの意味が不明だとの意見も出された。斎藤幸平ファンからの指摘だ。
Ⅱ.ドイツのイスラエルへの「偏愛」
駒林『ドイツの「罪の克服」とは何だったかのか』は、ベルリン在住のイスラエル出身精神分析家イリス・ヘフェッツの証言をもとに、イスラエルへの「偏愛」ともいえるドイツ(国家と社会)の姿勢について報告したものだ。ヘフェッツ氏はベルリン広場で、イスラエルによるガザでのジェノサイド停止を求める訴えをして、警察に逮捕されたという。なぜドイツ政府は、イスラエルを批判できないのか。「イスラエルの問題を指摘するユダヤ人が、ナチスを祖父母に持つドイツ人から『反ユダヤ主義者』と非難されるようになった。」「ドイツには・・・犠牲者の側に立つことで自分たちが尊い存在になり、受け継いだ加害者性を捨てようとして(いる)」「ドイツ政府はその過去を「過去最悪の悪事と罪」として美化し、私たちがやった大量虐殺は史上最低であり、他と比べられない」「唯一無二で最悪のものだから、たった一度しか起こらず、ホロコーストと他の大量虐殺を比較することはできない・・・だからドイツでは今ガザを起きていることは、ジェノサイドとはとらえません」。こうした貴重な証言に考え込まされた。「過去の克服」に向けたドイツの積極的な姿勢を称賛し、見習うべき対象としてきたものにとって、これらの証言は残酷なほど衝撃的だ。
橋本伸也『「歴史家論争2.0」とドイツの転落』は、駒林論考をドイツ国内での諸論争によって、さらに詳細に裏付けている。『ドイツ・カテキズム』論争で紹介された五箇条のうち二箇条を書き留める。
3.イスラエルの安全保障はドイツの国家存立根拠/国是の一部である。
5.反シオニズムは反ユダヤ主義である。
Ⅲ.11月例会の予定
(1)場所・日程:11月21日(木)14.00-16.00時、吉井町西部コミュニティセンター学習室(2F)
(2)テーマ:『世界』11月号から
①特集1.アメリカという難問 a.三牧聖子「ガザが問う、カマラ・ハリスの真価』
b.『「右派進歩主義」の台頭』
c.兼子 歩『アメリカン・ストロングマン』
➁袴田事件関連 a.藤原 聡『再審無罪「袴田事件」の58年』
b.ディビッド・T・ジョンソン『冤罪は、ただ一つの誤りの結果ではない』
以上
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