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2025年3月22日 (土)

富岡『世界』を読む会・3月例会の報告

 富岡『世界』を読む会・3月例会は、3月20日(木)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターにて、4人の参加で開催された。テーマは、『世界』3月号から、①永瀬 伸子『子どもを産み育てられない社会-ジェンダーが埋め込まれた日本の働き方』、②山本 美里『あなたは私で、私はあなた』および③二階堂 裕子『出生前検査と「生きられた障害」の時間』の3稿。

 Ⅰ.永瀬 伸子『子どもを産み育てられない社会』
 「生涯無子女性」って、ウム? 一同、首を傾げた。「1975年生まれ、今年50歳になる女性のうち28%が無子である」とのこと。特殊出生率とは別の少子化指標の登場だ。日本はこの数値が、OECD諸国の中でもっとも高いという。永瀬はこうした日本を、「子どもを産み育てられない社会」と断じる。参加者は各々、身近に「少子」を体験している。「家の近所に子供の姿が見えない」、「キャリア女性に対して、恋人が「専業主婦」を求めたため、別れた」、「娘ははなから結婚をする気がない」等々。男性の正社員率が79%に対して女性のそれは46%に過ぎず、5000人以上の企業の男性の総合職は42%に対して女性は18%に過ぎない。職場のジェンダー化が変わらない。最後に永瀬は、「子どもの育たない社会は、未来への投資をしない社会であり、われわれすべてに手ひどい形で跳ね返ってくる」と警告する。
 Ⅱ.山本 美里『あなたは私で、私はあなた』、二階堂 祐子『出生前検査と「生きられた障害」の時間』
 偶然、例会日の朝日新聞の「折々のことば」に、山本 美里の論考が紹介されていた。写真撮影との出会いに自分を取り戻した山本へのオマージュだ。
社会は、医療的ケア児へのケア提供者は女性と決めてかかっており、そのケア提供者を支える社会的インフラが未整備である。「自由に生きるための選択肢が私たちには乏しい」との言葉に、ただ沈黙するだけだった。
 二階堂の論考は、
障害者の前で沈黙するだけではいけない、と感じさせる。先週の木曜日に終了したNHK・Eテレの「バリ・バラ」は、障害者を含めたマイノリティの現状や苦悩について、沈黙することなく明けらかに語り合う番組だった。本稿では、ダウン症の当事者のあべけん太が、産婦人科医にインタビューした場面が紹介されている。ダウン症の胎児とそうでない胎児の違いを問われた医師は、「大きな病気で生命の危機にさらされるわけでもなければ、医学的には何も問題ない」と答えた。あべけん太は「(問題ないなら)なぜ中絶するのか寂しくなる」と尋ねると、医師はしばし考えて「産めない環境があるからですかね」と応えた、という。印象的な場面だった。障害者の尊厳を守ることについて、深く考えさせる論考だった。
 Ⅲ.4月例会の案内
1.日程等:4月17日(木)14.00-16.00時、吉井町西部コミュニティセンター
2.テーマ:①クオン ヨンソク『「民主韓国」と日本 国交正常化60年、乙巳(いっし)条約120年を迎えて

      ②中川七海『水道水の汚染はなぜ 21世紀の公害PFOA』
      ③遠藤誠治『自由民主主義と国際秩序 再構築の鍵』 以上 

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