富岡『世界』を読む会・5月例会の報告
富岡『世界』を読む会・5月例会は、5月22日(木)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターにて、参加者5人で開催された。テーマは『世界』5月号から、Ⅰ.「特集2 ビッグテックと権力」の①小林泰明『トランプと「テック・オルガリヒ」との危険な関係』、②橋本努『テック起業家たちのイデオロギー』及びⅡ.座談会 内海愛子×後藤乾一×成田龍一『「大東亜共栄圏」から捉え直す日本の戦争』の2テーマ3稿だった。
Ⅰ.特集2 ビッグテックと権力
第2次トランプ政権の矢継ぎ早に出される大胆な政策は、一見思い付きのように見えるが、その背景にはテック産業で富豪となったイーロン・マスクやピーター・ティールの思想がある(橋本努)という。それは例えば「火星に行く」というミッションを実現するためにトランプ政権を動かす、というものだ。橋本はそれを「カネ儲けのため」ではないと語るが、小林泰明はビッグテックを「テック・オルガリヒ」と呼び、彼らの強欲ぶりを伝える。AI開発をめぐる思想的対立として「効果的利他主義」と「効果的加速主義」を対比する。安全重視×開発加速、テクノ警戒×楽観、公益重視×私益(エゴ)重視、規制×自由。つまりAI開発は、強欲な大富豪たちがあらゆる規制から逃れてエゴ実現をはかる黒い企みの側面があることを知るべきだ。
Ⅱ.座談会『「大東亜共栄圏」と日本の戦争』
戦後80年経つなかで、「日本の戦争が体験から記憶へ、そして歴史へと移ろうとする」(成田龍一)という発言に、大切な認識だとの指摘があった。戦争の記憶と記録を日本社会に確実に定着させていくために、歴史研究と歴史教育が重要である。高校の「歴史総合」の必修化は、歓迎したい。そして被害と加害の歴史が、歪曲されることなく記録されることを願う、との発言があった。
インドネシアでは戦後、日本との経済関係を重視するため、日本批判を極力抑えるとともに、「日本占領」にまつわる否定面は、日本への忖度から曖昧にされた(後藤乾一)。しかしそこには、日本政府による史実の隠ぺい工作があったことを忘れてはならない。1992年にあったインドネシア公使高須幸雄によるインドネシア人作家プラムディアの『日本軍に捨てられた少女たち―インドネシアの慰安婦悲話』の出版妨害事件が、紹介された。それは「当時韓国で沸騰した慰安婦問題の東南アジアへの拡散を防ぐ外交を進めた」と新聞は伝えた。戦後、日本・インドネシア両政府によって、歴史の改ざん・隠ぺいが進められたことを、私たちは記憶し記録にとどめなければならない、と指摘された。
Ⅲ.6月例会の予定
(1)日程等:6月19日(木)14.00-16.00時、吉井町西部コミュニティセンター
(2)テーマ:『世界』6月号、「特集Ⅰ.科学VS政治」①八田浩輔『トランプ2.0 文化戦争と気候危機』②高村ゆかり『気候再生のために 米国 気候科学の危機』、「特集Ⅱ.老いる社会」③松浦司『少子化・地方創生・ジェンダー・・・「高齢社会」の袋小路』 以上
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