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2025年6月21日 (土)

富岡『世界』を読む会・6月例会の報告

 富岡『世界』を読む会・6月例会は、6月19日(木)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターにて、6人の参加で開催された。テーマは、『世界』6月号から「特集1.科学VS政治」の①八田浩輔『トランプ2.0 文化戦争と気候危機』と連載記事②高村ゆかり『気候再生のために 米国 気候危機の科学』、そして「特集2.老いる社会」の③松浦司『少子化・地方創生・ジェンダー―高齢社会の袋小路』の3稿だった。

Ⅰ.特集1.科学VS政治
 米国の科学が、トランプ2.0のもと揺れている。なかでも気候科学に対する攻撃が、激烈を極めている。政権幹部からは、気候変動の取り組みが
「誇張されたありもしない気候変動の脅威を助長」しているため「気候変動宗教の心臓部に短剣を突き刺す」と揶揄と憎悪に満ちた言動が放たれている。八田は、米海洋大気局(NOAA)への攻撃の詳細を丁寧にフォローしている。突然の解雇通告、気象観測気球の打ち上げ中止、ハリケーン監視体制の弱体化などなど。日々の生活に不可欠な正確な天気予報が得られなくなると同時に、将来の長期的な気候危機への対応が不可能となることへの危機感が、参加者の中で共有された。これまで米国が果たしてきた国際的な役割を考えると、これは米国だけの問題にとどまらない地球規模の深刻な問題だ。
 高村はトランプ2.0を批判しつつ、科学の自律性を保障することの価値を指摘、こうした観点からの日本学術会議法改正案の慎重審議を求めた。しかし国会を通過した現在、日本も米国的状況に一歩近づいたといえるかもしれない、と感想が語られた。

Ⅱ.特集2.老いる社会
 厚労省発表の人口動態統計によると、2024年の出生数は686,061人で過去最少、合計特殊出生率は1.15と過去最低となった。松浦は、出生率は有配偶率と有配偶出生率に分解でき、出生率低下の70%は、有配偶率の低下で説明できる、と指摘する。つまり未婚率の上昇が出生率低下の大きな要因という。バブル崩壊以降の非正規雇用の増加=雇用の不安定化のもと、就職氷河期世代の未婚率が上昇したためだ。
 東北地方などの若年女性の転出超過や出生率低下の動きの加速によって、合計特殊出生率が「西高東低」となっているとの指摘は、興味深い。また、子どもをもつ女性の生活満足度が低く、男尊女卑的風土の残る東アジアの国々の合計特殊出生率は、日本1.20、中国1.00、台湾0.87、香港0.75、韓国0.72といずれも低く、その逆の北欧の国々は、アイスランド1.59、デンマーク1.50、スウェーデン1.45、ノルウェー1.40と相対的に高い。育児・家事負担のジェンダー格差が要因との指摘も重要だ。
 最後に、著者の指摘する「人口減少を前提とした社会制度の設計」の重要性を確認しあった。

Ⅲ.7月例会の予定
1.日程等:7月17日(木)14.00-16.00時、吉井町西部コミュニティセンターにて
2.テーマ:特集1.憎悪の政治学から①小川たまか『女性への制裁という「エンタメ」』 ②三浦マリ『「変わらない」を変える バックラッシュとミソジニー』および③ナオミ・クライン、アストラ・テイラー『終末ファシズムの勃興』     以上

 

 

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