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2025年8月22日 (金)

富岡『世界』を読む会・8月例会の報告

 富岡『世界』を読む会・8月例会は、8月21日14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターにて、4人の参加で開催された。テーマは『世界』8月号から、「第1部 遠い平和」の宇野重規×国谷裕子『メディアは公共性を取り戻せるか』と柳井正×寺島実郎『日本滅亡を回避できるか』の2対談と、「第2部 『戦後』の現在」の大澤真幸『戦後80年 最初と最後の政治風景』だった。

Ⅰ.第1部 遠い平和
 1.「メディアは公共性を取り戻せるか」
 「ポスト・トゥルーズ」の時代のもとでのメディアとネットの間の
せめぎあいを論じている。井上ひさしの「風向きの原則」が話題を呼んだ。メディアがある風が流れていることを伝え、多くの人がその風に一体化する。そのことで風はさらに大きくなり、それをまたメディアが伝える。こうして「みんながそう思っている」という世論が出来上がる。国谷氏は長年わたるジャーナリストの経験から、「報道は本来、吹いている風から距離を置き、風向きの原則に抗って、伝えることを多角的に伝えるべきだ」と強調する。しかし今、この「べき」が嫌悪されている、との指摘があった。原理・原則を喪失した社会の出現としてのトランプ現象。日本社会も例外ではない。対談最後の「メディア内部での自由な議論の毀損」の指摘に、言葉を失う。
 2.「日本滅亡を回避できるか」
  「日本人が世界に対して根底的な関心を失っている」との寺島氏の指摘に対して、「世界がかつてなく近くなっている」という我々の皮膚感覚との矛盾が対置された。身の回りの海外在住者や国際結婚者の存在、増加する外国人労働者や旅行者との交流など、間違いなく「世界が近くなっている」。なのに「世界」に関心が向いていない。なぜか? 寺島氏が挙げた指標(パスポート保有率の減少、GDP
占有率の大幅減)のほかに、ODA予算の対ピーク時半減、アフリカへの直接投資残高の大幅減、海外留学者の減少、米国での博士号取得者のこの10年での半減、などが出された。「世界」よりも「イマ・ココ・ワタシ」の生活が何よりも大切なのだ、との解がだされた。

Ⅱ.第2部「戦後」の現在(大澤論考のうち「戦後80年 最後の政治風景」のみ)
 現在の日本人の政治意識は、5類型に分類される。そのうち左に「リベラル」(27%)があり、右に「新自由主義右翼」(13%)がある。自民党は少数派の「新自由主義右翼」に依拠し、旧民主党は多数派の「リベラル」に寄りかかる。多数派に依拠する旧民主党が負け、少数派に依拠する自民党が勝利する。何故か? 著者は、
政治的活性が「新自由主義右翼」のみが高く、「リベラル」その他は低いことを注目している。また、日本のリベラルの政治的活性の低さは、日本の市民的抵抗が、国際的にみて例外的に少ないことと関係していることが示唆される。先の柳井×寺島対談の「世界に関心が向いていない」ことの現われでもある。

Ⅲ.『世界』9月号の先読みから
 寺島実郎『能力のレッスン特別編 戦後80年への沈思熟考-なぜ、日本は戦争に向かったのか(前編)』のp.127上段を見てほしい。そこには正田篠枝の短歌が紹介されている。
 「太き骨は 先生ならん そのそばに小さきあたまの 骨あつまれり」
 この短歌は、石破首相が8月6日の広島平和祈念式典で、総理大臣挨拶のなかで引用した短歌そのものである。何万とある原爆を詠った短歌から、両氏が偶然この歌を同時期に引用したとは考え難い。ネット検索すると、石破・寺島両氏の交流がわかった。寺島氏が石破首相に、この短歌のことを紹介したものと想像する。この論考で寺島氏は、安倍政権による戦後70年談話に欠落した視座を指摘し、戦争に至った内部要因への構造的認識を主張している。これは、石破首相が何らかの形で出すことを意欲する「戦後80年談話」に対する寺島氏からの熱いメッセージではないかと想像するものだ。はたしてどうなるか、注目したい。

Ⅳ.9月例会の予定
1.日程等:9月25日(木)14.00-16.00時、吉井町西部コミュニティセンターにて(9月は第4木曜日に変更!)
2.テーマ
 特集1 政党政治の果て ①安田浩一『「最悪の選挙」が残したもの』、②橋本直子『「外国人デマ」に向き合う』、③宮原ジェフリー『「声なき声」の参政党支持-分断と対話のゆくえ』。
 特集2ガザのいま、中東の未来 ④清田明宏『飢餓の構造』、⑤ハミッド・ダバシ『パレスティナから目を離すな』以上
 

 

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