富岡『世界』を読む会・10月例会の報告
富岡『世界』を読む会・10月例会は、10月16日(木)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンターで、4人の参加で開催された。テーマは、『世界』10月号から、Ⅰ.〈特集1.働き続ける私たち〉の①濱口桂一郎『女性「活躍」はもうやめよう』、②田中洋子『短時間正社員』、③小山内園子『危うくてもスピードを落とせない自転車たちを救うこと』の3稿と、Ⅱ.矢吹康夫『外見への差別はどうやってなかったことにされてきたのか』。
Ⅰ.特集1.働き続ける私たち
特集のキーワードは、「ワークライフバランス」。「やりがい・充実感・責任感」のある仕事と「子育て・介護・自己啓発・家庭と地域・健康で豊かな」生活の調和を(内閣府)。しかし現実は、男女役割分担型世帯単位のワークライフバランス。男性 ワーク無限定・ライフ限定、女性 ワーク限定・ライフ無限定(濱口)。そこで登場したのが、男女雇用機会均等法のもとでの「総合職」「一般職」の導入。女性に総合職の道が開かれたと思いきや、妻・母ゆえに、ワーク無限・ライフ無限の「無理ゲー」の強制。
脱出の道は?濱口は、「ミクロな場での小さな活躍・静かな活躍」を、そして田中は、ドイツの働き方「働く時間を選べる正社員」というオルターナティブを提案する。
読書会では、かつての参加者自身の働き方を振り返って、3つの論考の理解を深め合った。
Ⅱ.「外見の差別」
障害学は、障害を個人的な問題として捉える障害観=個人モデルを問い直し、社会モデルへの転換を促してきた。障害者の経験する問題は、障害者を排除する社会にあることを示し、社会の変革・改善を強調する視点である(矢吹)。自らの体験にもとづく障害学研究は、障害者という当事者性を強く意識するものだ。そこには、当事者だから見える景色・課題と、非当事者である健常者には見えない景気・課題が示されている。これに関連して、市川沙央さんの朝日新聞(25/9/12)寄稿文が話題になった。「誰ひとり取り残さず、すべての人が暮らしやすい持続的な地球と社会」を考えるという「朝日地球会議2024」に対する痛烈な批判文だ。登壇者76人全員が健常者で、手話通話や同時字幕も用意されておらず、「人手不足による障害者の生活の不安、生存権すらおぼつかない未来への危機感を、健常者の感覚で嗜好品の問題に矮小化してしまう」ことを恥ずべき簒奪だと批判している。マジョリティの発する「やりがい・充実感」や「誰ひとり残さず」の言辞は、実態との深刻な乖離によってマイノリティを打ちのめす。
Ⅲ.11月例会の予定
1.日程等:11月20日(木)14.00-16.00時、高崎市吉井町西部コミュニティセンター・学習室(2F)
2.テーマ:『世界』11月号 〈特集1.あなたと移民〉から
①メイン論考 小井土彰宏『移民政策の「失われた三十年」を超えて』
②サブ論考 李英美、望月優大、森千香子、座談会(金井真紀×小林麻里×伏見操)、松本尚之の論考・座談会
以上

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