2017年7月 7日 (金)

思想劇 ヴィクトール・E・フランクル著『もうひとつの〈夜と霧〉ビルケンヴァルトの共時時間』を読み解く

   19年前、アウシュヴィッツを訪ねるにあたりテキストとしたのが、フランクルの『夜と霧  ドイツ強制収容所の体験記録』でした。絶望的な強制収容所のなかで、精神的な自由を維持しつづけた英雄的な人びとの話に、こころ打たれたことを記憶しています。今回、この本を読み返してみて、ただ一か所、それもたったの一行に、オレンジ色のマーカーが付けられているのを発見しました。

「私はここにいる―ここに―いる。私はいるのだ。永遠のいのちだ……。」

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2017年5月 2日 (火)

水玉模様の『日本国憲法』

 4月29日(土)の朝日新聞連載の『折々のことば』(鷲田清一稿)に、思わず注意をひかれました。憲法読本についての記述でした。(以下全文引用) 

 ごくあたり前のことをきちんとしてさえいれば、妙な変化球に勝つチャンスは十分にある。
                                                   松永真
 日本国憲法をそのまま書籍化してベストセラーになった本がある。そのブックデザインを手がけたグラフィックデザイナーは憲法を人びとの身近にまで「引きずり下ろす」ため、形としては美しく力強いが、惨劇の記憶も折り重なる日の丸を、水玉模様のポップな柄にし、本文の活字も大きくした。一にシンプルな真っ当さを追求して。「松永真、デザインの話。」から。(以上『折々のことば』4/29から)
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2017年3月28日 (火)

朴裕河著『引揚げ文学論序説―新たなポストコロニアルへ』を読む

 私の知っている「引揚げ」は、学生時代に農場実習で世話になった八ヶ岳山麓の開拓村の老夫婦や、宇都宮で読書会をともにした高校教師が、旧満州からの引揚者であったこと、また、昨年100歳で亡くなった地区最長老の男性が、シベリア抑留からの帰還者であったことなどです。私にとって「引揚げ」は、無縁ではない。このことは、戦後「外地」(植民地や占領地)から「内地」への帰還者が、民間人341万人、軍人・軍属311万人、合計650万人(当時の人口の10%)という膨大な人数であったことを思えば、納得がいきます。

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2016年12月27日 (火)

ノーマ・フィールド著『今、いかにして本気で〈平和〉が語れるか』

 札幌に住む友人から、小冊子が送られてきました。ノーマ・フィールド著『今、いかにして本気で〈平和〉が語れるか あるいは➀ひとはなぜ、掛け替えのない、はかない命を守ろうとしないのか、できないのか ②「逆さまの全体主義」に抗するために』。この長い表題の小冊子は、2015年11月、札幌市のあるプロテスタント教会で開かれた「北海道宗教者平和協議会結成50周年記念講演」の講演録です。時機を得た興味ある講演だとして、友人が送ってくれたもの。Photo             (YouTube 2015年の「11.19戦争法廃止国会前集会」から)

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2015年6月22日 (月)

「沖縄慰霊の日」をまえに沖縄戦の真実を読む

 明日6月23日は、沖縄慰霊の日です。70年前のこの日、沖縄守備隊である第32軍司令官・牛島満中将と参謀長・長勇中将が、摩文仁の軍司令部地下壕内で自決し、守備軍としての組織的抵抗は終わりました。しかし、その後も米軍の苛烈な掃討作戦のなか県内各地で散発的な戦闘はつづき、9月7日の降伏文書調印による戦争終結に至るまで、多くの犠牲者を出しつづけました。史実として沖縄戦終結の日は9月7日ですが、沖縄では、沖縄戦の戦没者を慰霊し平和を祈る日として、6月23日を「沖縄慰霊の日」と定め、毎年記念行事を行っています。「沖縄慰霊の日」は、沖縄県民とともに本土に住む私たちが、沖縄戦の記憶を未来の世代につないでいく、大切な記念日です。そして、犠牲者たちの現代人へのメッセージは、「日本軍は住民を守らなかった」という沖縄戦に関する核心的な史実です。

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2015年6月15日 (月)

沖縄と日本国憲法

軍民20万人が死亡した沖縄戦から70年が経ちました。今冬訪問した摩文仁の丘に建つ「平和の礎」に、あらたに87人分の戦死者が刻銘され、刻銘者総数241,336人となりました(沖縄タイムス6/11ウェブ版)。この平和の礎(いしじ)は、沖縄戦で亡くなったすべての人の名前を刻んだもの。いまなお、沖縄戦での戦死者名が発掘されつづけています。

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2015年5月27日 (水)

金 時鐘 著『朝鮮と日本に生きる―済州島から猪飼野へ』を読む

従軍慰安婦問題や産業革命遺産群の世界遺産登録など、歴史認識にかかわる韓国からの執拗な日本批判は、どこから来るのでしょうか? それは、韓国の人びとが記憶しつづけ、日本人が忘却してしまった日韓(日朝)の歴史の核心、日本の朝鮮植民地統治にあります。私たちはいま一度、この植民地支配の歴史に、真摯に向き合わなければなりません。〈在日〉詩人・金時鐘氏の回想録『朝鮮と日本に生きる―済州島から猪飼野へ』(岩波新書、2015/2/20刊)は、金時鐘氏の86年間の朝鮮と日本での凄絶な生き方を通して、日本の植民地統治の「業の深さ」を教えてくれます。

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2015年5月 5日 (火)

丸山眞男稿『憲法九条をめぐる若干の考察』(1965/6)を読む

 5月3日、高崎の群馬音楽センターで開かれた「第31回憲法記念日集会」に参加しました。この10年、毎年参加することが、恒例となりました。今回は、弁護士の宇都宮健児さんの「戦争をする国づくりを止め 憲法改悪を許さないために」と題した講演会がありました。宇都宮さんは、「憲法改悪の動きはピンチではあるが、あらためて日本国憲法の立憲主義の理念や国民主権・基本的人権の尊重・恒久平和主義の原理を日本社会に定着させるチャンスでもある」と力強く語りました。約二千席の会場を埋めた参加者から、大きな拍手が起こりました。

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2015年3月23日 (月)

孫歌著『北京便り 中国の真の面影』を読む

 実は前回の記事は、孫歌著『北京便り 中国の真の面影』の紹介を意図して書きはじめたのですが、結果的に、この本とは直接関係のない竹内好の著作に関する記事となってしまいました。竹内好が1960年代、時の政府の反中国政策を向こうに回し、日本の人びとの中国理解を促す目的で「中国を知るために」を書きつづけたように、孫歌氏は国家間の緊張と日本社会で反中意識が高まるなか、日本の読者に対して普通の生活人の中国の姿を見て欲しい、中国の体温を届けたいと願い、2009年から2013年までの約4年間、日本語による「北京便り」を『図書』(岩波書店)誌上に隔月で寄稿しつづけました。しかも、彼女は日本政治思想史研究者として、竹内好に(「竹内好が黙って座りながら私を眺めているという幻覚(p.109)」を見るほどに)敬愛の念を抱きつつ、卓越した読み手として竹内好の著作を読みつづけてきました。こうした因縁を書くつもりだったのです。長い前書は、ここまで。

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2015年1月11日 (日)

隣国韓国の「自省的・自己批判」の書-朴裕河著『帝国の慰安婦-植民地支配と記憶の闘い』

 8年前、日韓の不信と対立が深まる中、一人の韓国人女性が両国の和解を求め、次のようなメッセージを両国民に送りました。日本の朝鮮植民地時代の「被害者の示すべき度量と、加害者の身につけるべき慎みが出会うとき、はじめて和解は可能になるはずである」(朴裕河著『和解のために』06年刊)。私はこの本を、通勤途上の車中で読んだのですが、被害者である韓国の人々に「赦し」と「自省」を求めた著者の勇気ある発言に、強く感銘をうけたことを思いだします。

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