2012年1月18日 (水)

葉落帰根(葉落ちて根に帰す)

 東日本大震災と福島原発事故による福島県の避難者は15万人を超え、そのうち県外への避難者は6万人を突破した、と報じられています(11/16現在、朝日新聞)。原発事故被災地では、放射能を取り除く除染作業が開始されていますが、こうして避難した人びとがいつ帰れるかは、まったく目処が立っていません。チェルノブイリの経験は、放射能汚染された広範囲の地域が、永久に帰宅不可能となることを、わたしたちに教えています。多くの人びとがいま、故郷喪失の崖っぷちに、立たされています。

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2011年9月 3日 (土)

池澤夏樹著『静かな大地』に読むアイヌの生き方

 今月末、友人とともに、北海道東部を旅行する予定です。武田泰淳の小説『森と湖のまつり』の舞台を訪ねよう、との趣旨です。小説の主人公たちは、1954年9月23日から30日までの1週間、阿寒湖-美幌-屈斜路湖-弟子屈-釧路-標津-塘路を、忙しく移動しました。私たちも、ほぼ同時季に、これらの地を訪ねる計画です。大震災のあと中止を考えたのですが、この旅行を切っ掛けに新しく日常を取り戻そう、と思い直しました。

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2011年8月13日 (土)

井上光晴の手毬歌

 四月長崎花の町
 八月長崎灰の町
 十月カラスが死にまする
 正月障子が破れはて
 三月淋しい母の墓

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2011年8月 8日 (月)

原民喜『夏の花』と大田洋子『屍の街』

 広島原爆の日の一昨日、終日、原民喜の『夏の花』と大田洋子の『屍の街』を読みました。『夏の花』は20数年ぶりの再読ですが、大田洋子の作品は、『屍の街』を含め今回、初めて読みました。これらは、「原爆文学」の出発点となり、しかも、その最も代表的な作品とされてきました。3..11フクシマ原発事故は、日本社会がばじめて、みずから加害者となって被曝者を生み出し続けている、と云う意味で、ヒロシマ・ナガサキ・ビキニとは異質な体験ですが、被害者が、日本社会を構成する人びとであるという意味では、過去の被爆体験と重なり合います。ヒロシマ・ナガサキ・ビキニの被爆者たちの発する現代へのメッセージに、耳を傾けたい。

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2010年10月21日 (木)

武田泰淳著『森と湖のまつり』再読

Photo_2   1ヶ月ほど前、NHKテレビ(BShi)で『よみがえる作家の声 武田泰淳』という番組を見ました。NHKが録音・保存してきた作家の自作朗読と、作品にまつわる映像や作家ゆかりの場所を紹介するシリーズのひとつです。作品は、武田泰淳の代表作のひとつ『森と湖のまつり』でした。私の好きな小説のひとつです。

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2010年10月 5日 (火)

井上ひさし著『一週間』-シベリア抑留の深奥に迫る-

Photo  井上ひさしの最後の長編小説『一週間』を読み終えた日の翌日、偶然に、NHKの『16歳のシベリア抑留~“偽りの連行”を追う』(目撃日本列島10/2放映)という番組をみました。60万人ともいわれるシベリア抑留者のなかに、旧制中学生であった16歳の少年たちが26人もいたこと、彼らは日本人元将校の「内地へ」という偽りの言葉によって連行されたこと、そしてこの事実は戦後65年間、研究者たちにも知られておらず、この春、当の「少年」の一人のNHKへの手記の提供で初めて明らかになったこと、を知りました。

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2010年9月 2日 (木)

茨木のり子展~わたしが一番きれいだつたとき~

P1120522_1  昨日、高崎市郊外にある県立土屋文明記念文学館に行きました。夏草が茫々と生い茂った広い前庭を通って、文学館というイメージとはすこし異質な、大きく立派な建物へ入って行きました。会場入口には、詩人の大きな肖像写真が、架かっています。2006年に急逝された、詩人茨木のり子の企画展。きりっとした眼差しは、シャープな印象を受けますが、その作品は、優しい。

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2010年4月26日 (月)

井上ひさしさんの追悼読書 下

9784167111229_3  山中信介の住む根津界隈は、大空襲で被害にあわなかった、東京では数少ない地域でした。戦災で生き残った縁者が、信介を頼ってやってきました。亡くなった長女の嫁ぎ先の祖父母と義理の妹、亡兄の妾と信介が密かに思いを寄せる未亡人、知人の娘さんが二人。信介の家族5人を含め総勢12人が、敗戦直後の混乱期を、ひとつ家族のように肩を寄せ合って、なんとか働き、暮らしていきます。

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2010年4月25日 (日)

井上ひさしさんの追悼読書 上

Photo_2  井上ひさしさんが亡くなり、半月たちました。好きな作家の一人でした。小説 『吉里吉里人』に抱腹絶倒し、宮沢りえ主演の『父と暮せば』に嗚咽を漏らしたことを、思い出します。また、小田実さんや加藤周一さんとともに「9条の会」の呼びかけ人のひとりとなり、平和憲法を護ることを訴えつづけた姿に、つよく共感しつづけました。井上さんへの哀悼の気持ちを込めて、未読であった代表作のひとつ『東京セブンローズ』(文春文庫2002年刊、単行本は1999年刊)を読みました。

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2009年12月29日 (火)

『うつほ物語』が『源氏物語』と『今昔物語』を準備した

  『うつほ物語』(952-965頃)は、遣唐使清原俊蔭が、波斯国の天女から授かった琴と技法を、四代に渡って伝授していく伝記風の物語と、絶世の美女への求婚譚や皇位継承をめぐる藤原氏・源氏両家の対立を描いた世俗物語からなる、わが国最初の長編小説です。
 私はこの小説を、細部の表現の美しさや平安時代についての新鮮な知識に刺激されながら、波乱万丈の展開に心躍らせ、読みつづけました(宮城秀之編『うつほ物語』角川ソフィア文庫・主な巻の抜粋現代語訳)。加藤周一は、日本文学史上、『源氏物語』と『今昔物語』の源にあった大きな記念碑のひとつとして、この『うつほ物語』を位置づけています。

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