2017年5月17日 (水)

゜恋のハレルヤ゜が蘇る ― なかにし礼著『夜の歌』を読む

  安倍首相が「9条に自衛隊を明記し、2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と改憲派集会にビデオメッセージを寄せた日の翌日、作家・作詞家のなかにし礼さんは朝日新聞紙上で、「首相は憲法を尊重し擁護する義務を負っているのに、改正の期限を切るなどというのは大問題」だと批判しました。なかにしさんは、「戦争をしないことをうたう日本国憲法は世界一です。特に前文は人類の進化の到達点だといってもいい。世界に誇れる芸術作品」だと語りました(朝日新聞5/4)。この記事の中で、昨年発表された小説『夜の歌』のことが取り上げられ、これこそ最新の「引揚げ文学」だと思い、早速読んでみました。

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2017年5月 3日 (水)

植民地朝鮮を書きつづけた作家・小林勝を読む

 朴裕河著『引揚げ文学論序説―新たなポストコロニアルへ―』で取りあげられた小林勝の作品を、読みました。朴氏は、小林勝という作家について、「植民地とされた朝鮮で生まれて、43年というあまりにも短い生涯を「朝鮮」とそれをめぐる心象風景を描くことに捧げた作家であった」と紹介します。今、この作家について論じることは出来ませんが、彼の作品で表現された植民地・朝鮮についての記憶を、いくつかメモしておきたい。

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2017年4月 6日 (木)

後藤明生著『夢かたり』を読む

 先に読んだ朴裕河著『引揚げ文学論序説』(人文書院2016刊)において、植民地や占領地における帝国支配の「記憶の風化が進んでいる今日こそ、改めて読み直されるに値する」と高く評価された後藤明生の小説『夢かたり』(中央公論社1976刊)を、市立図書館から借り読みました。

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2017年1月10日 (火)

夏目漱石著『明暗』と水村美苗著『続 明暗』を読む

 漱石没後100年(1916年12月9日没)の年末から生誕150年(1867年2月7日)の年初にかけ、漱石未完の絶筆『明暗』と、その未完の書が書き継がれた水村美苗著『続 明暗』を読みました。

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2016年12月 2日 (金)

大河小説の醍醐味を味わう―津島佑子著『火の山―山猿記』

 Tさんへ
 その後、如何お過ごしでしょうか。
 秋の寄合いの時、長年介護なさってきたお姉さんが亡くられたことや、地元では由緒ある旧家であったTさんの実家について、話されました。富士山をまぢかに仰ぎ見るTさんの実家は、貴兄の子ども時代は、両親と10人の子どもからなる大家族だった、ということでした。長兄と末っ子の貴兄との年齢差は、20歳以上離れていた。その長兄が、医者となってT家を継ぎ、現在、その息子がやはり医者として、T家の跡取りとなっている。貴兄たちが生まれ育った家は、旧家にふさわしい歴史ある大きな木造住宅でしたが、あちこちの痛み激しく、ついに取り壊すことになったと、懐古と惜別の情深く話されました。
 津島佑子著『火の山―山猿記』を読んでいて、小説の主人公たちの有森家とT家とが、駿河と甲州の違いはあるとしても、「地方の旧家、大家族、富士山」という3つのキーワードで結ばれていることを発見し、これは貴兄に知らせなくては、と思った次第。

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2016年11月 8日 (火)

重度障害者殺傷事件と津島佑子著『狩りの時代』

  19人もの死者をだした相模原市の重度障害者殺傷事件は、世界各地でつづくテロによる多数殺人事件を連想させ、日本国内だけでなく世界を震撼させました。また、各メディアの報じた「重度障害者は生きていても意味がないので、安楽死にすればいい」「障害者は不幸を作ることしかできません」「世界経済の活性化のため」といった容疑者の言葉は、ナチス・ドイツが優生思想により、ユダヤ人虐殺に先立ち、知的障害者や精神障害者など約20万人を抹殺したことを、思い起こさせます。事件直後、全盲と全ろうの重複障害を持つ福島智・東大教授は、事件の背景として、「労働力の担い手としての経済的価値や能力で人間を序列化」する現在の世界を覆う新自由主義的な人間観にあるとし、「そこでは、重度の障害者の生存は軽視され、究極的には否定されてしまいかねない」と指摘しました(毎日新聞7/28)。

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2016年10月13日 (木)

津島佑子著『ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語』を読む

 Aさんへの手紙

  元気にお過ごしですか。
 津島佑子著『ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語』を読み終えたとき、もし貴君がまだ、この本を読んでないとしたら、是非、読むことをすすめたいと思いました。

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2016年9月27日 (火)

加藤周一「青春ノート」と『チボー家の人びと』

 8月13日深夜、NHK・ETV特集は、『加藤周一 その青春と戦争』を放映しました。番組は、加藤周一の遺稿のなかから発見された8冊の大学ノートに書かれた日記-1937年から1942年に書かれた学生時代の日記-を中心に、制作されたもの。ETV特集の健在ぶりを強く印象付けられた、秀逸な番組でした。

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2015年10月26日 (月)

「過去」をどう伝えるか-ベルンハルト・シュリンク著『朗読者』を読む

 今年の1月、戦後70年の節目の年を意識し、エヴァ・ホフマン著『記憶を和解のために-第二世代に託されたホロコーストの遺産』を読みました。ホロコーストからの生還者の両親のもとで育ったエヴァ・ホフマンは、第二世代(生存者の子供世代)が過去と現在を繋ぐ存在として、ホロコーストの意味を次世代に伝えていく使命を、強く自覚します。このテーマを「加害者の子供世代」の立場から追究しているのが、ドイツ人作家・法学者のベルンハルト・シュリンクです。彼の世界的な大ヒット作品『朗読者』を読みました。 

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2015年2月 1日 (日)

アウシュビッツ解放70年の日に、ハンス・ファラダ著『ベルリンに一人死す』を読む

1月27日、アウシュビッツ強制収容所がソ連軍によって解放され70年目を迎えました。この日、収容所跡ではホロコーストを生き延びた元収容者ら約300人が参加し、記念式典が開かれました。式典には、ガウク独大統領、オランド仏大統領、コモロフスキ―・ポーランド大統領などEU各国の首脳が出席する一方、プーチン露大統領とオバマ米大統領は欠席しました。歴史の和解と今日の対立のコントラストが、アウシュビッツ強制収容所跡にあいて、際立ちました。第2次世界大戦終結70年の節目の年の、最初の大きな記念行事です。

 

 

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